*【申込受付中】4月6日開催!「イスラエル・パレスチナ、共存への道」森佑一取材報告会
NGO B’Tselemの活動家サリットさんに南ヘブロンの入植被害に遭っている場所や活動家の拠点を案内してもらった後、せっかくなのでイスラエル人活動家がこの地域でどの様なことをしているのか知りたいと思い数日宿泊することに。
西岸内では主にヨルダン渓谷や南へブロンなどイスラエルが行政や治安をコントロールしている地域エリアCにおいて様々なボランティア団体や個人が活動しているのですが今回お世話になったのはTa’ayushというボランティア団体経由で来ている活動家たち。
彼らがここ南ヘブロンで行っているのがProtective Presence Activism(PPA)という活動で、イスラエル人活動家がパレスチナ人と一緒にいることにより入植者の嫌がらせや暴力を抑止しようという取り組み。
基本的な活動としては、活動家数人でパレスチナ人家庭にホームステイして一緒に過ごしたり、彼らが羊の放牧などに行く際にはカメラを持って同行するというもの。そこで、もし入植者がやって来て衝突が発生した際には抗議し、カメラでその様子を記録して弁護士に送ったりSNS(X・Facebook・Instagram)上に投稿して問題を周知したりしています。これは活動家自身も危険に晒される活動で、衝突の中で怪我を負ったり警察に逮捕されたりする人もいるそうです。
それでも長年続けている年配の活動家がいたり、最近活動に参加する様になったという活動家もいます。特に驚いたのは20代前半から30代前半と若い世代が多いことで、皆バックグラウンドに違いはあれど、過去から現在に渡りイスラエルが行ってきた占領や入植に問題意識を持ち直接的な活動をしたいという意志を持っています。
例えば、一緒にホームステイで回った30代のYさんは、社会問題に関心を持っている両親の元で育ち、彼女自身も西岸の現状に問題意識を持つ様になり、兵役を拒否して数ヶ月間軍の刑務所に入れられていた時期もあると言います。
そうして今の活動に参加する様になったのですが、普段平日はエルサレムで看護の仕事をしていて週末は可能な限り南へブロンに来てパレスチナ人と一緒に過ごす様にしているそうです。なのでほぼ休みのない大変な日々を送っています。
また彼女は以前よりアラビア語も学んでいて語学力も非常に高く(自分より圧倒的に高い)、ホームステイしたご家庭でも子ども達が非常に懐いていて、そのご両親や親戚からも信頼が厚く「次はいつ来てくれるの?」とよく尋ねられていました。
他にも20代のJさんは以前はレストランで調理の仕事をしていたのですがそれを辞め、数ヶ月前にこの活動を初めて以来大半の時間を南へブロンで過ごし、時々休息のために数日エルサレムに帰るという生活を送っています。
活動に参加する様になったのは、人生で初めてパレスチナ人と話したことがきっかけで、そこからパレスチナ人が置かれている問題に関心を抱く様になったと言います。アラビア語も学びながら活動を行っています。また彼に会った時に首筋にミミズ腫れができていたのですが、聞くと「馬に乗った入植者に鞭で打たれてできた傷だよ」と教えてくれました。
他にも多くの若者が自身のバックグラウンドやきっかけから生まれた問題意識から今の活動をするに至っていました。
そもそも、彼らイスラエル人が南ヘブロンのパレスチナ人コミュニティに問題なく入って行って活動できているのは、B’TselemやTa’ayushなどが長年現地の人々と良好な関係を構築してきたからこそ。そうでなければ、ただでさえ入植者の嫌がらせや暴力により反イスラエル感情を抱えている人々の中に入っていくことは容易ではありません。
10月7日以降、南ヘブロンで入植活動が活発化したことを受け、当初は多くの活動家がエリアCに赴きこうした活動を通してパレスチナ人たちを守ろうとしてきました。しかし、現在の状況が長期化し活動家自身も疲弊して続けられなくなった人も多くいると言います。依然として厳しい状況にはありますが、個人的にも彼らをサポートしたいと思っています。
現在、一般的なニュースやSNSではガザの空爆被害などの報道が主で、国際世論の中でイスラエルとパレスチナの分断はどんどん深まっています。だからこそ別の視点を提示する上でも草の根的にイスラエルの占領政策や入植に反対して活動しているイスラエル人がいることを伝えるのは意味があるのではないかと勝手に思っています。
ただ、現地で活動しているイスラエル人自身も、ハマスによる攻撃で同じイスラエル人が殺されたり人質になったりしていることに深くショックを受けているので、彼らを応援するにしろ彼らがイスラエル人として抱いている感情への配慮も欠かしてはならないなと思います。
ちなみに以下のドキュメンタリーは現地で知り合ったイスラエル人映像作家が作ったもので最近賞を取ったそうです。また追々日本でも上映したい!