長期で海外取材していると付き物なのが待機時間。現地では取材する相手を探したり会うスケジュールを調整したりすることが多くなるんですが、その合間にどうしても何もすることがない日が発生します。そんな日や時間を利用して自分の場合は街中を散策したり観光したりと現地の日常を体験しています(楽しんでいる)。
今回のイスラエル・パレスチナ取材でも、取材活動の合間に時間ができることが多々あります。そんなわけで、前々から気になっていたイスラエルで暮らすイエメン系ユダヤ人を訪ねたりしています。
調べによると、現在イスラエルには約20万人ものイエメン系ユダヤ人が暮らしているそうで、1949年から1950年にかけてイスラエルが秘密裏に実施した「魔法の絨毯作戦」というもので、当時イエメンで暮らしていたユダヤ人のほとんどがアメリカやイスラエルに移住した様です。今もイエメン系ユダヤ人独特の伝統が残っているらしく大変興味深い。
そのため、テルアビブ市内にはイエメン人が多く居住する地域があって、イエメンレストランも数多く点在しています。そこに行けばイエメンルーツの人に会えるだろうと言うことでレストラン巡りをしているわけなんです。これまでにSaluf & Sons、Hummus Asi and Adnan、Achim Ozari Restaurantの3店舗を訪れたのですが、働いている人の顔立ちがイエメン人っぽい。そして皆アラブ人特有のフレンドリーさがあって親しみを感じます。また店内にはイエメン系ユダヤ人の伝統を伝える写真や装飾品も飾られていました。
食事はチキンや野菜を薄い生地で巻いたラップやホンモス、炭火焼きチキンと豆ごはんセットなどを食したのですが、印象としてはイエメンで食べた料理よりもヘルシーと言うか薄味な感じでした。薄く平らなイエメン特有のホブズ(アラブのピタパン)も生地の感じがクレープぽかったり、クロワッサンぽかったりとお店により違っていました。イエメン特有の「ヘルバ」というハーブや香辛料の一種であるフェヌグリークを使った緑色のソースは健在でした。
ちなみにイスラエル軍のガザへの軍事侵攻以降、イエメンの反政府勢力フーシ派が活動を活発化させ、紅海でイスラエルの船舶を拿捕したりイスラエル側にミサイルを発射したりしていて、それに対しアメリカ軍がイエメン国内のフーシ派の拠点に空爆するなどしています。この様な状況にイスラエル国内で暮らすイエメンルーツの人々は周囲からどの様に思われているだろうかと思ってレストランで働く彼らに話を聞いたことがあるのですが「特に何も問題ないよ!」とのことでした。
彼ら自身はイエメンルーツといえど生まれも育ちもイスラエル。70年以上前に祖父母の世代がイエメンからイスラエルに渡ってきたのでかれこれ三世代になります。そのためイエメンルーツだからと言って今回の件で差別されたり嫌な目にあったりなどと言うことは無いようでした。実際、訪れたレストランにはたくさんの市民が訪れていましたし、常連のお客さんもいて和やかそのもの。
今回はイエメンレストランで食事をしながら交流するくらいでしたが、また機会があればもう少しイスラエルのイエメンコミュニティーにも食い込んでいきたいなと思います。