*【申込受付中】4月6日開催!「イスラエル・パレスチナ、共存への道」森佑一取材報告会
12月後半から2月前半にかけての約1ヶ月半、イスラエルとパレスチナ双方に足を運んで現地の状況や人々の暮らしを直接見聞きしてきました。遥々現地まで取材に行くきっかけは大体いつも同じで「自分で直接見聞きしたい」という興味がベースにあります。
過去にヨルダンでJICAボランティアとして活動していたこともあり、アラブ人やムスリムの人たちに対しては馴染みがあります。一方これまでイスラエルやユダヤ人との接点が全く無く、彼らについても知りたいと思い渡航していました。
そんな訳で約5年ぶりにイスラエル・パレスチナに足を運んだのですが、改めてニュースやSNSを通して抱いていた現地の印象と、実際に訪れてみて感じる印象にかなり隔たりがあるなと感じました。何より印象に残ったのはイスラエル人、パレスチナ人双方に様々な考え方や価値観を持った人々が暮らしていてグラデーションを帯びているということです。
この印象はイスラエル・パレスチナに限らず、過去に取材で訪れたウクライナなどでも感じたことなんでですが、「正・誤」や「善・悪」など二極化して単純明快に捉えらえ切れない実情があると改めて感じました。ただ残念ながらSNSを始めとした情報空間内ではいつも同じ様なこと(単純化・二極化)が起きてしまっています。
実際イスラエル側では、パレスチナの土地はユダヤ人に神から与えられた場所だということで入植活動を正当化している人。ハマスの大規模攻撃をうけ恐怖や憎悪をパレスチナ人全体にまで広げている人。イスラエルによる長年に渡るパレスチナ占領に対して問題意識を持ち現地のパレスチナ人と共に活動している人など様々な立場や考えの人々がいます。
一方パレスチナ側でも、日々イスラエル入植者からの嫌がらせや暴力に晒されイスラエルに対する恐怖や憎悪を募らせている人。ハマスがイスラエルに対して行った攻撃は素晴らしいことでイスラエルを打倒すべきと考える人。かつてテルアビブで働いていてイスラエル人の友人がいる人。ここで紹介しきれない程現地の様相は多面的です。
それはイスラエルやパレスチナ内に限らず、日本を始め海外で暮らすユダヤ人やアラブ人においてもそれぞれ立場や考え方に差異があります。そう言った多面性を個々人が認知して目を向けることは大切で、思い込みを防ぐなど情報リテラシーを持つ上でもとても重要なことなのではないかと個人的には思います。
*昔見たプロミスという映画が改めて良いなと思いました。イスラエル人とパレスチナ人の子どもたちの交流を描いた作品です。まだ見たことがない方は是非ご覧ください↑
また、今回一連の取材を通して、イスラエル人、パレスチナ人互いに人ととしての直接的な接触がない場合に、より攻撃的で排他的な思想に陥りやすくなっている様にも感じました。ここで言う「人として」というのは、イスラエル兵とパレスチナ市民、ハマス戦闘員とイスラエル市民といった形の接触ではなく、一般市民同士の接触を意味します。
自分たちもまた普段の日常生活において、直接的に関わったことがない人に対して、勝手に〇〇人は〇〇だと属性をつけて一括りにしてしまうことがあるのではないでしょうか。これは相手に対して「人格の捨象(抽象化)」が起きているということで、その様な心理状態にある時に人間は他者に対して無頓着で残酷になります。「人格の捨象」についてはこちらのラジオ番組内で話されてるので是非聞いてみてください。
現在ガザで起きていることは極めて悲惨だし、即時停戦に向けて声を上げたり働きかけたりすることは非常に重要なことです。ただ、イスラエル・パレスチナにおけるネガティブな側面だけに注目し過ぎて、個々人や国際社会の中で対立や衝突をエスカレートさせて分断した空気感を醸成してしまう様に思います(もうそうなっていますが)。
イスラエル人もパレスチナ人もどこかに行くことはできないし、もう戦争をしたくない。どこかで折り合いをつけて平和に暮らしたいと思っています。ですが双方の極端で過激な人たちがいつもそれをダメにしてしまう。社会は白黒はっきりつけられないグレーな部分が多いのに・・・
テルアビブ博物館前で出会ったイスラエル人女性の話がとても印象に残っています。彼女は長らくガザ境界近くのキブツで暮らしていて、昔分離壁が無かった頃にはガザに行ったことがあってホンモスが美味しかったと思い出話もしてくれました。ですが10月7日以降はテルアビブで避難生活を送っています。
今後、何らかの形でイスラエル軍によるガザ侵攻が収束したとしても、この先何十年にも渡りイスラエル・パレスチナの問題は続くと思います。その長期的な視野で見た時に、国際社会に分断した世論や空気感を作り続けてしまうことは、現実的に考えてどこかで折り合いをつけて和平に向かう流れを阻害してしまう様に思います。
それを少しでも緩和させる上で、イスラエル・パレスチナに横たわっている問題そのものだけでなく、双方の問題解決に向けたポジティブな動向にも注目して認知を広げていくことが大切なのではないでしょうか。これはあくまで個人的な見解ですが。
ちなみに、西岸は南ヘブロンでパレスチナ人の支援活動を行なっているイスラエル人のイヤールさんがクラウドファンディングを実施しています。
これまでイスラエル・パレスチナ取材に関してニュースレターで配信してきましたが、その内容はまた後日ポッドキャストでも配信予定です。文字より音声で聞く方が良いという方はSpotifyやApple Podcastsよりご登録ください。また過去のイスラエル・パレスチナ関連記事はこちらよりご覧頂けます。