ここ最近、イスラエル・パレスチナ取材で遠ざかってしまっていたウクライナ。最後に現地を訪れたのが2023年2〜3月なのであれから1年以上経ちました。ウクライナ戦争が始まってからは2年以上になります。
これまで時折現地の友人とやりとりをすることがあったのですが、東部ドネツク州の街バフムート出身(現在はロシア側)で当時ボランティアとして活動していた友人は、現在は妻と子ども3人と共にヨーロッパの別の国へ逃れてアメリカへ避難する手続きをしていると言います。
(ゼレンスキー)大統領はクレイジーだ!ウクライナ政府は男性をまるで「肉」のように戦争へ送りこんでいる。もう武器も無いのに敵(ロシア)を抑えなければいけない。恐ろしいことだよ。
ロケットが飛んでくる度に子どもたちは泣いていたし、彼らを守りに走ったりしていた。だから家族と一緒にウクライナを離れたんだ。
ウクライナ戦争が長期化する中で、アメリカを始め西側諸国の支援や兵員が不足し厳しい状況が続いています。そんな中でウクライナ軍による強制的な徴兵が行われ、それから逃れるためにモルドバなどの近隣諸国へ密入国する人も増えているそうです。
日本で暮らしているウクライナ人の友人の話では、戦時下にあるウクライナで腐敗政治が再び顔を出していると言います。
友人に聞いた話だけど、徴兵されて戦争に動員されても金払い次第で配属される場所が変わるらしい。多額のお金を支払える人は比較的安全な任務に就けるけど、そうではない人は危険な前線地帯に送り込まれるみたい。
現地の戦闘の前線をタイムリーに示す地図を見ると、少しずつですがまたロシア軍に押し込まれている様子が伺えます。
前回、現地ボランティアの人たちと訪れた東部ドネツク州南部の都市アウディーイウカに関しては、2014年に始まったドンバス紛争の時からウクライナ軍とロシア軍との戦闘の前線地帯となっていて街は砲撃により破壊され、多くの市民が地下で暮らしていました。
報道によると、この街も今年2月にロシア軍に包囲されウクライナ軍が撤退したことで現在はロシア軍の占領下に置かれています。また首都キーウや東部ハルキウで暮らしている友人のSNS上にはここ最近頻繁にミサイル攻撃に遭ったことを知らせる投稿があり、状況がまた悪くなっている様です。
また一年ぶりに現地のウクライナ人の友人とZoomでオンライン通話をしたのですが最近引っ越したそうで、忙しそうではありましたが元気そうでした。彼の奥さんも新しく仕事を始めた様で「今住んでいる所は職場まですごく近くて徒歩5分で行けるの!」と嬉しそうに話してくれました。
彼は当時からボランティア団体で医療支援を行うスタッフとして活動していて、頻繁に東部ドンバス地方の村々を回っていました。現在も同じ団体に所属しているのですが、今は主に南部ヘルソンでの支援活動に携わっているとのことでした。
会話の中で「戦争が2年以上経過して強制的な徴兵が行われていて、国外へ逃れる人も多いと聞いたけど」と言うと、あまり好ましく無いといった表情で彼の考えを教えてくれました。
ウクライナから逃れる人たちを非難するつもりはないけど「自分たちの戦争から逃げることはウクライナを捨てること」だと思う。中にはバーやクラブなどにいたところを強制的に徴兵されて前線へ送られる人もいたと聞いたことがある。
でもそう言った人たちは、応急手当てなど戦地で必要になるスキルを習得していない状態で送られるから返って現場に危険をもたらす。だから自分は軍事訓練などのプログラムを受講して戦場で必要なスキルを身につけているんだ。
彼の出身は現在ロシア占領下に置かれている東部スハンスク州の都市セベロドネツクなんですが、友人や知人との間、家族内ですら親ウクライナ派と親ロシア派で分断される様な状況にあったと言います。彼自身はロシアに対し強い敵対感情を抱いていて、敵国の言語であるロシア語を使わない様にしていると言います。
今現在も戦争が続いているウクライナでは、自分自身や家族のために密入国してでも国外に避難するウクライナ人がいる一方、祖国を守るために覚悟を決めて残っているウクライナ人もいます。
そしてここ日本でも、祖国のために毎週ほぼ欠かさず新宿南口で街頭募金をしている在日ウクライナ人たちがいます。ウクライナ人たちを見ているといつも「祖国」というものについて考えさせられます。
自分を含め戦争の外側にいる人たちは「戦争反対・平和が一番」と簡単に言うことができますが、現地で直接的に軍事侵攻を受けて戦っている人たちに対して「今すぐ武器を置いて停戦しましょう」とはなかなか言えない実情があります。
最近視聴した核兵器と冷戦、そしてウクライナ戦争までの変遷を辿ったドキュメンタリーシリーズ「ターニング・ポイント」がとても参考になりました。主に西側諸国のバイアスや視点で描かれているというのを念頭に置いて見るのが良いと思います。